ビデオアートのパイオニアであるナム・ジュン・パイクは、テレビを作品の造形材料と観客とのコミュニケーションの媒体として使用 し、現代美術の新しい地平を切り開きました。音楽や映像、パフォーマンス、文学などさまざまな芸術のジャンルを組み合わせた前衛 的な作品を発表しつづけた彼は、レーザー技術や最新のデジタル技術を積極的に取り入れながら、刻々と変化する社会の発展像を作品 に反映して来ました。
電子技術に対する深い哲学的考察を通じ、テレビの概念を独創的に再解釈したナム・ジュン・パイクは、さまざまな作品を通じて、人 間がテレビやビデオシステムによって拘束される存在ではなく、逆に機械や物質文明の創造者であることを強調しています。 彼の作品から、機械の冷たさより人間的な温かみが感じられるのは、このような理由からです。大衆文化や芸術の幅広い分野において 彼の影響力は絶大であり、ウィットに富んだパフォーマンスに込められた深い哲学的意味は、多くの作家に芸術的なインスピレーショ ンを与えました。釜山・広安里の中心に設置された『デジタレーション』は、360度から鑑賞できる作品です。「津頭魚火」の松明のよう に、釜山市の繁栄とパダビッ（海と光）美術館の発展を願い、すべての参加作家の作品を調和する象徴的な灯台の役割を果たしていま す。

パク・ジウン（フリーランスキュレーター、ソウル・パリ）