映画の予告編は（これから展開される映画という）未来へのメッセージとして表現されています。しかし、それは過去について、つまりすでに作られた映像につ いて語るという形式を取っており、予告編は本編のあらすじまたは要約ではないのです。

「私の知ってる限り、映画『ローズバッド（Rose Bud）』が何を意味するのかを説明する予告編は存在しない」しかし、予告編は映画に関する簡単な紹介と、不思 議な雰囲気を漂わせることに関係しています。：映画がアクションなのか、ロマンチックコメディなのか、どうやって知ることが出来るでしょうか。私たちが予告編 を、せいぜい本編に対して全てが偶然で、大したことのない形として理解していても、私たちのほとんどが見た映画そのものより、広告である予告編をより多く見 たということです。そして、このようなことが私たちの文化的知識を生み出す方法に影響を与えるということを再認識する必要があります。
おそらく、その過程で私たちは他の何かを指しているのではなく、まさにそのものを指している何かとして、予告編を想像することもできるでしょう。これがシャ ルル・ド・モーの最近の３つの作品です。

これらは存在しない映画のための予告編なのです。シャルル・ド・モーの2004年の作品、『あなたは未来の宇宙飛行士』では、熱帯の草原を宇宙の惑星に変容させ るのに十分な仕組みである、緑色に着色された夜間レンズ越しにアフリカの草原を見ます。ライオンやハイエナ、あるいは地球外エイリアンかもしれない生き物の 目が、星明かりのように白く輝きながら画面を横続 切って疾走します。
続いて、ロシアの宇宙船ソユーズの着陸シーンを、そしてカザフスタンの砂漠に置き去りにされたシャルル・ド・モーならではの表現によるソユーズを目の当たりにします。これは記者らのフラッシュで歓迎されるアメリカの宇宙船とは対照的で、孤独な運命を示しています。
ついに映画の予告編が持つ予言的な本質に同意するかのように、作品のタイトルがスクリーンに現れます。スタンリー・キューブリック監督の『2001年宇宙の旅 （2001: A SpaceOdyssey）』(1968)とフランクリン・J・サフナー監督の『猿の惑星（Planet of the Apes）』(1968)を思い起こさせる『あなたは未来の宇宙飛行士』 は、典型的な長編映画のように1時間半に及ぶものではなく、約２分の間に緩やかに都会的に進化していく物語を展開しています。 『あなたは未来の宇宙飛行士』がSFの形式を取り、『死または名誉』が剣とサンダルに代表されるローマの叙事詩を扱っているように、予告編には決定的で劇的な シーンを提供していないということを示す説明が欠けています。

私たちが代わりに得るものとは、張りぼての賞賛です。-ローマのラッパ吹きのストックショットシーンは、聴覚障害者のソリストとコーラスが手話でヴェルディ のアイーダを合唱しているコンサートホールのシーンにつながります。ここで私たちが違和感に気づかないのは、演奏ではなく、奇異さが存在し続くところに転換 という行為が起きているからです。

釜山・広安里の海辺で、あなたは未来の宇宙飛行士、死または名誉。そして、無題のままであるシャルル・ド・モーの３つ目の作品を展示することに、どのよう な意味があるのか。それはおそらく、公共の場に現れるほとんどのアートが芸術特有の言葉で表現されるのに対し、シャルル・ド・モーの作品は公に使われる言葉 を用いているのです。
一見、作家の予告編は日常的なものに見えます。これは、彼らがよりエキゾチックでユニークな光とともに反射する時間、空間、そして資本との関係について深 く考える瞬間です。
トーン・モートン(Tom Morton)（美術評論家、英・アートマガジン『フリーズ（FRIEZE）』）